「アーティストビザ取得の流れ」と言う記事を書きました。
その中ではシンプルに流れを書いていますが、実際にどんな書類が必要だったの?
弁護士にどんなこと言われたの?など、実際に私が経験したことを綴りたいと思います。
私のケースはわりと稀なケースだと思うので、「諦めなければ取れる!」と信じています。
アーティストビザはプロセスがめんどくさそう、取るのが大変って聞いたからしんどそう・・・
と思っている方には特に、読んで欲しい記事です!
経歴が全然足りなかった私
2013年。
学生ビザで4年目を過ごしていた私は当時29才。
ダンサーとしては決して若くなく、頭脳も身体能力も、スタミナも20代前半の頃よりはすでに劣っていた。
しかし、29才、ロサンゼルスで学生。もう学生はいやだ!!
そう思った私は、「アーティストビザに変更したい!」と強く思うようになった。
ジャネット・ジャクソンのバックダンサーになることが一番の夢だったため、
アーティストビザ取得は、その夢を叶えるためには避けて通れない道。
実際にビザをすでに取っていた友人に聞き、友人が雇った弁護士に会いに行くことに。
アジア系の弁護士で、何人もの実績があり信頼もされていた。
初回無料コンサルティングで言われたことは、
「経歴が足りないから国外・国内関係なく、もっと経歴を積んできて欲しい」とのことだった。
確かに、経歴が全然ない。
当時もっていた経歴は、
- 中学&高校時代にダンス部の全国大会で特別賞や2位を取得(日本)
- 京都の小さな大会でチーム優勝(日本)
- 関西の大学生向けダンスコンテストで特別賞(日本)
- 京都&大阪でダンスインストラクター(日本)
- 友達のカーニバルに出演(ロサンゼルス)(確か2〜3回だったと思います。)
- 友達のビデオに出演(ロサンゼルス)(確かこちらも2〜3回)
恥ずかしいながらこうやって書き出すとあるように見えますが、これだと完全に弱いと言われた。
ましてや、中学&高校の時の経歴なんぞ、もう10年以上前の話。
でも弁護士に、「アメリカ国内の経歴をもっと増やせば大丈夫」と言われていた。
と思った私は、そこからなんでもやったれ精神で、ビデオでも、ショーでも、
とにかく頼まれたら即答で「やる!」と言い、オーディションがあればビザが無くても受け、
ダンスクルーに所属し、約1年間半の間で、果敢にいろんなことに挑戦した。
そしたら友人も知り合いも増え、少しずつアメリカ国内での経歴が増えてきた。
よっしゃ!!これで弁護士にもう一度話してみよう!
弁護士が突然姿を消した事件
お恥ずかしいながら、ビザが無い中、アメリカ国内で更に加えることができた経歴を赤裸々に書きます。
実際にどのくらいの程度だったのか読者の方に知っていただくために・・・
- カーニバル出演10回ほど
- Varsityクルー所属
- Richgirlsクルー所属
- Zara Larssonバックダンサー
- Malumaバックダンサー
- ThaitaniumのMVダンサー
- Ryo-VIBES & Mr.VegasのMVダンサー
- Far East MovementのMVダンサー
- MYAのバックダンサー
- Phong Vyのバックダンサー
- Chad Future & VIXX RAVIのMVダンサー
- Ry AnthonyのMVダンサー
- KARMAのバックアップダンサー
- Monster of Hiphopにてスカラーシップダンサー受賞
などなど。
あまり知られていないアーティストの方が多いですね。
稼いではいけない学生だったため、お金を稼いだ!とは言えませんが、
少しお手伝いとしてお小遣いを頂いたと表現しておきます。
以上の経歴も、さほどすごいわけではありませんが、ビザが無かった状況でやったと考えると
わりと頑張ったのかな・・・と思います。(もちろん、もっとすごい人、たくさんいますw)
そして弁護士のところに、「経歴増やしました!」と戻って伝えたところ、
「よし、じゃあ、進めましょう!」となり、弁護士費用5500ドルほどお支払い。
全て、一気に支払いました。書類も順調に集めて行きました。
「さぁ、申請準備は整ったから申請するぞ!!!」
ということで、弁護士との最後のミーティングをするために、オフィスを訪ねました。
・・・うん?あれ?
オフィスが閉まってる。
ドアをトントン・・・シーーーーン。
ドアをドンドンドン!・・・シーーーーン。
電話もするが誰も出ない。
とにかく物音一切しない。人気もない。
それからというものの、一切連絡が取れずに、終了。
いまだにその弁護士の行方は誰も知りません・・・
どうやらカリフォルニアで弁護士免許をもっていなかったらしく、捕まったか、
どこかに逃げてしまったかで、姿を消してしまいました。
アホなことに、オリジナルの書類や証拠も預けてしまっていた私は、また振り出しに戻った気分。
もうどうしていいかわからず、ショックのあまり、涙が出る。
お金も返ってこない、せっかく集めた書類なども一部無くなった。
新たな弁護士探し
最初にも書きましたが、私が最初の弁護士に言われたこと。
それは「アメリカ国外・国内関係なく、経歴が足りないからもっと経歴を積んできて欲しい」
その「アメリカ国外・国内関係なく」の部分。
「アメリカ国内の経歴」が実は他の弁護士からすると、かなりNGだそうです。
完全に最初の弁護士を信頼しまくっていた私はどん底に落とされた気分。
Kate弁護士のところに行って聞いたものの、
「あなたの経歴はアメリカでの経歴よね?それはあまりにも危険だわ。ごめんなさい。私ではあなたのケースは受け入れられない。」
また、別のアジア系の弁護士のところに行って聞くものの、
「そうね、海外での経歴がほぼ無いからこれは危険だわ。ごめんなさい。」
・・・車でひとり号泣。
そう言い渡されて車で帰る自分の姿は今思えば、惨めだったなと思います。
結局遠回しに、「出戻ってください。」と言われているようなもの。
おいおい、今更、日本に帰って経歴積んで、またロサンゼルスに帰って来るなんか絶対に出来ひん!
私にそんな時間は無い!!今まで私を応援してくれた人がいるんや!!
と自分に言い聞かせ、私は思ったのです。
「あの前の弁護士が『よし、それで進めよう!』と思ったなら、他の弁護士でも同じような考えをもってる人が必ずいる!」と。
当時、前の弁護士によって被害を受けた人たちのグループがFacebookで立ち上がり、
そのグループの中で誰かがMichael Fehmel弁護士を勧めていました。
すがる思いで慌てて連絡。
彼も弁護士として長い経歴を持ち、実績には自信をもっている弁護士。
話し方は少し皮肉っぽいけど、ズバズバ言ってくる感じは正直な感じが伝わる。
Michael弁護士は私の前の弁護士が飛んでしまったことも知っており、
彼から「あんなことは弁護士としてあってはならないこと。本当に気の毒で申し訳ない。」
と謝罪されました。
なんだか気持ち的に救われた気がしました。
アーティストビザは彼の専門分野では無いものの、私のケースを受け入れてくれることになりました。
それと同時に、もともと3000ドルだった弁護士費用を2500ドルと値下げてくれました。
もちろん「アメリカ国内の経歴が多く、働いたと思われるため、危うい。」
と言われましたが、それでも引き受けてくれたことに、今でも感謝しています。
経歴はアメリカ国外での経歴が断然有利。
ここまで読んで頂いた方はお分かりかもしれないのですが、
という認識をされます。
アメリカの失業率は年々下がってきてはいるものの、外国人が雇用を奪うのは、いつの日も嫌がられること。
よって、アメリカ国内で経歴が多いと、
「おいおい、君はアメリカ国外でちゃんとお金を稼ぐほどの才能が無い上に、アメリカの雇用を奪ってまでアメリカで働いていた可能性がある!アメリカの雇用を奪う者よ、帰国したまえ!!」
となって却下される可能性があるため、弁護士には散々「危ない」と言われ続けたのです。
アーティストビザ申請にあたり、私が実際に集めた書類
-
5通の推薦状
-
10通のコンフォメーションレター
-
今までやった経歴のスクリーンショット・フライヤー・新聞・Webページ印刷・ステージパス・携わったアーティストたちの経歴など
-
今後の詳細予定が書かれた契約書(ディールメモ)などの予定表書類
-
スポンサーとの同意書
-
Dancer USAからのレター
-
AGMAからの署名レター
-
USCISへの申請フォーム
-
弁護士からのカバーレター
上記の6〜9は気にしなくても大丈夫です。弁護士が色々とやり方を教えてくれます。
Dancer USA, AGMA, USCISについては下記の記事に記載しています。
アーティストビザを取得する方法は、他にもたくさん事例がありますが、 私の経験からお話します。 ロサンゼルスで、たくさんの素晴らしい日本人ダンサーに出会いました。 そんな活躍している日本人のダンサーたちも皆、アメリカで働く際[…]
重要なのは1〜5の書類たちです!
5通の推薦状
日本語で「推薦状」と言いますが、英語では「Recommendation letter(レコメンデーションレター)」
と呼ばれるものです。
一般的に3〜5通必要です。(弁護士さんによってはもっと必要だ!と言う方もいるようですが)
書いてもらう人は、エンターテインメント業界での専門家や著名人であれば誰でもオッケーです。
できればアメリカ人が良いと聞きました。
レコメンデーションレターの内容は、以下の通り。
- どこでその専門家と出会ったのか、どこであなたのことを知ったのか。
- その専門家と働いたことはあるのか。
- それはどんなプロジェクト?
- そのプロジェクトにおいてあなたはどんな役割だった?
- その専門家はあなたの業績や才能についてなんと言っているのか。
などが書かれており、専門家のサインも記載されたものです。
私の場合、このレコメンデーションレターを書いてくれた人がラッキーなことに大物だった!!
- ジャネットジャクソンの振付師 – ギル・ドゥダラオ
- ビヨンセの振付師 – ジャクエル・ナイト
- ブリトニースピアーズの振付師 – ブライアン・フリードマン
- レゲエアーティスト – ミスターベガス
- ダンス映画の音楽製作をしていた – リッキー・ルナ
本当に運がよかったと思います。
一番嬉しかったのは、もちろんジャネットの振付師だったギル・ドゥダラオです。
ギルには、ギルが珍しくクラスを教えたときに出会い、
「私はジャネットのバックダンサーになるためにアメリカに来ました!」と図々しくも本人に伝えました。
そして全く別の日に、ダンスイベントでギルを発見!発見するやいなや、
「ギル!この前ギルのクラス受けてた私だけど、覚えてる!?どうしてもお願いがあるの!ビザ取るために今頑張ってて、レコメンデーションレターを集めています。ギルにもぜひレコメンデーションレターを書いて欲しいんだけど、書いてくれる!?」
と、うざい具合に猛アタック。
そしたらあっさり「いいよ!」と言ってくれて、個人e-mailアドレスをゲット!!
それから前もって作成しておいたサインをするだけの状態の書類を添付してe-mailしたものの、返事返ってこず。
もう一度送っても返って来ない。
ふむ。そう来たか・・・
送信ミスのフリをして、3回連続で送ってやりましたw
そしたら、サインだけが書かれた書類が添付されて返って来ました。
ビヨンセの振付師であるジャクエル・ナイトは、当時Debbie Reynoldsでクラスをもっており、そのクラスを毎回受けていたので、私の存在を知っていてくれました。
なのでそれはわりと簡単に書いてくれました。
ブリトニースピアーズの振付師であるブライアン・フリードマンには、一回しかクラスを受けたことが無いにも関わらず、図々しくも本人にFacebookを通じて直接メッセージをしました。当時はFacebookで知らない人からのメッセージでも見れたんですよね。
もう一度クラスを受ける機会があったので、挨拶をしに行った時に、「ああ!メッセージをくれたのは君か!」と覚えていてくれて、仕事がかなり早かったブライアンは自らがすでに用意しているレコメンデーションレターを送ってくれました。
ミスターベガスは友人が誘ってくれたMV撮影で出会ったレゲエアーティスト。
なぜか気に入ってくれたのか、直接連絡先も得ることができ、「レコメンデーションレターにサインを書いて欲しい」と聞くと、快く書いてくれました。
ダンス映画の音楽製作をしていたリッキー・ルナは、私の友人の知り合いだったこともラッキーで、その友人に頼んでもらい、サインを書いてもらうことができました。
とにかく、猛アタックですw
若さもあったのか、何も怖くなかった時代です。
10通のコンフォメーションレター
コンフォメーションレター(confirmation letter)とは、事柄の確認事項を確認してもらい、サインも書いてもらうレターです。
要するに、
「彼女はただ才能がありパフォーマンスをしただけです。それを認め、確認しました。」と言う内容が書かれたレターです。
そのため、「お金が支払われている」ようなニュアンスが伝わらないように、「work」という言葉は書かないようにしてもらいました。
携わった振付師やプロデューサー10人に一人ずつ書類を作成して、サインを書いてもらいました。
今までやった経歴のスクリーンショット・フライヤー・新聞・Webページ印刷・ステージパス・携わったアーティストたちの経歴など
過去3年以内に、3ヶ月以上関わったプロジェクトだとわかる証拠を提出できると良いそうです。
私が関わったプロジェクトは3ヶ月以上にわたってなかったですが。
例えば・・・
MVやバックダンサーとしてショーに出演している姿がわかるYoutube動画をスクリーンショット
ショーの告知フライヤー
自分のことが書かれた新聞記事(地域新聞などでも十分)
ダンスの仕事で得た給与明細
関係者とプロジェクトのやりとりをしていることがわかるメール
実際に販売されたショーのチケット
ステージパス
オンラインで自分についての記事が書かれたページを印刷
携わったアーティストと一緒に写っている写真
Millennium dance complex(ミレニアム)のクラスでピックアップされて踊っている姿がわかるスクリーンショット
携わったアーティストの経歴がわかるもの(オンラインで通常探せます。その携わったアーティストがなにかのアワードに受賞しているなど、経歴が強ければ強いほど、効果的だそうです。)
などなど、言い出したらキリがないですが、とにかく証拠が残っているものは全て提出します。
今後の詳細予定が書かれた契約書(ディールメモ)などの予定表書類
これをゲットするのが、おそらく一番大変で、一番重要な書類。
多くの人がこの壁にぶち当たるのですが、諦めなければ必ずゲットできるものです!
こちらが詳細予定が書かれた契約書(ディールメモ)の一例です。
※上記の画像は一例です。
ディールメモを書いてくれる人にたまたま出会った私のエピソード。
スポンサーとの同意書
上記全ての書類は誰が作成するもの?
まとめ
なんでも諦めたらゲームオーバーという言葉がある通り、
「諦めない!」精神を持てば、時間はかかるけど取得できるものと思っています。
弁護士に何か言われたとしても、また違う意見をいつも持っているのが弁護士です。
たくさんの弁護士に直接合って、しっかり比べる作業をして信頼のできる弁護士を見つけることはとても大事なことだなと思いました。
ということで、私が思う大事なポイントはこちら!